モテることはうらやましいことなのでしょうか?
モテてみたい。それは多くの人が抱く願いではないでしょうか。とはいえ、四六時中モテるのもめんどくさそうです。「一度モテを体験してみたい」程度が庶民的願望かと思われます。けれどモテるということは、うらやましいことなのでしょうか。
モテすぎると困る
学生時代、私の友人に、たいそうモテる女子がいました。彼女は透き通るような色白の肌のむっちりとした体型の子で、いつも愛想良くニコニコ笑っていました。親しみやすさがある彼女のところには、毎週のようにいろいろな男性からのデートのお誘いが来ていたものです。
彼女は誘われるがままにコンサートや船上ディナーに出かけて楽しんでいましたが、デート帰りに「付き合ってください」とか「結婚してください」などと言われることも多く、「困ったな、なんて断ればいいんだろう」とよく悩んでいました。
いくらモテても、結婚できる男性はひとりだけです。それ以上の男性はお断りするしかありません。愛し愛されるたったひとりの人がいればそれで十分なのだとしたら、モテるということは実はあまり効率が良くないものなのかもしれません。
モテてみたい願望
『失われたモテを求めて』(草思社・刊)は、モテてみたい、という願望を持った31歳、年収300万円の黒川アンネさんが、モテに挑戦しながら色々な考察を重ねるという、読みごたえのあるエッセイです。
黒川さんは文章から映画や古典にかなり知識のあるかただということがわかり、思慮深く控えめな感じも素敵です。そのままでも十分魅力的だと思うのですが、彼女はモテを目指して奮闘します。
大事にされたい
文中の「どうして私には好きと言ってくれる人がいないのだろう」「誰かに選ばれた、好きになってもらったという経験がない」という心の叫びなどから推測するに、黒川さんのいうモテの定義とは、複数の男性からちやほやされることではなく、誰かに特別な存在として扱ってもらうことのように感じました。
筆者の場合、受け身派ではなく行動派なので、誰かに選ばれたいとは思いません。その代わり誰かを選び出したいという気持ちがとても強いのです。なので、選んでもらえないのなら、こちらから選びに行こう! と励ましたくなりました。
身近な男性を誘う
実際、彼女もその後、身近な男性やSNSでつながっている知人の男性に、自ら声をかけていきます。そして本当はとても魅力的なのでしょう、誘えば男性たちは会ってくれるのです。ただ、彼女が望む特別扱いの展開にならなかったため「モテない」と感じてしまったのかもしれません。
ファーストデートでいきなり特別感までは出てこないことも多いでしょう。デートを重ね、少しずつ関係を深める過程も楽しんでいただきたかったですが、それだとモテという主目的からは外れてしまうのかもしれません。
海外の男性と交流
印象深かったのは、彼女が始めた海外の男性とつながることができるマッチングアプリでの出来事。彼女ほど知的で英語も使える女性は、外国人男性のほうがその魅力をわかってくれそうな気がしましたし、実際、インド在住の男性から「可愛い」とモテたのです。
そこからはとても感動的で、彼女は自分への自信を取り戻し、ポジティブにもなれたのです。外国人男性のほうが褒め上手だと言われているし、これはとてもいい気分転換方法に思えました。しかも国際交流なので、視野も広がりそうです。
こうしたアプリには日本人女性のお金目当ての男性もいるらしいので、行動は慎重にする必要はありますが、肯定的な言葉を浴びるだけなら、外国人男性とのメッセージ交換はそう悪いことではないのかもしれません。そして、前を向いて歩き出した黒川さんが幸せに満ちた日々を送ることを願わずにはいられません。
【書籍紹介】
失われたモテを求めて
著者:黒川アンネ
発行:草思社
31歳、年収300万円、小さい頃からずっと「学年で一番太った子」。Tinder、Go To、パイパン、卵子凍結…コロナ禍でのモテ奮闘記。